カザドの歴史 第三紀編

 こちらはTolkien Writing Dayへの参加記事になります。



こんなで大丈夫かしらと思いながらもお陰様で、このドワーフの歴史まとめも第三紀までやってきました。

gwn001.hatenablog.jp
gwn001.hatenablog.jp
gwn001.hatenablog.jp

ひとえに私の力不足ゆえ前回から間があいてしまいましたが、いま一度のお付き合いをよろしくお願いいたします。

黎明編からお付き合いいただいている方にはご理解いただけていると思いますが、こちらは映画ではなく原作の歴史まとめになります。

映画と原作の歴史の違いについては実際に両方にふれていただくか、『別冊映画秘宝 ロード・オブ・ザ・リングホビット中つ国サーガ読本 』に詳しくまとめられていますので、そちらをお勧めいたします。



※これより先は『ホビットの冒険』や『指輪物語』のネタバレを含みます

カザドの歴史 第三紀

f:id:gwn001:20160621175436p:plain

蠢動

最後の同盟により冥王サウロンが討たれ平和になったエリアドールで、カザドたちは鉱山にもぐり、お宝を作って貯金するのに夢中でした。

そのためT.A.1300年に霧ふり山脈にオークが増えて攻撃されても、ほかの中つ国の民と同様に世界の変化*1に気づくことはありませんでした。


ドゥリンの禍

ドゥリンがふたたび王となった第三紀中頃、カザドたちはミスリルを求めてバラジンバル*2バルログ*3を掘り起こしてしまいました。

バルログは怒りの戦いから逃れて、ずっと地の底に隠れていたのです。

ドゥリン六世とその息子ナインが沢山の国民と共にバルログに殺され、栄華を極めたカザド=ドゥームは敵の手に落ちました。


エレボール創建とアーケン

命からがら逃げ延びたドゥリンの民たちは主に北方へ向かい、ナインの息子スライン一世はエレボールに新たな国を建て山の下の王となります。このとき山の精髄、アーケン石が発掘されました。


灰色山脈と竜

スライン一世の息子トーリン一世はエレボールから、フロンティア精神につき動かされてドゥリンの民の大部分が集う灰色山脈へ移住します。

灰色山脈は手付かずの豊富な資源があったのです。

ですが何年かすると灰色山脈の先の荒れ地から竜がやってきて、カザドの作り上げた財産を略奪しました。

そしてダイン一世は次男のフロールと共に大きな冷血竜によって殺されました。

残されたドゥリンの民のほとんどは灰色山脈を捨て去ります。

まずダイン一世の息子グロール*4は多くの家来を連れてくろがね連山へ去り、残りの民は世継スロールとダイン一世の弟ボーリンに導かれエレボールへ戻りました。


大竜スカサの伝説

ロヒアリム*5たちの間では、ドゥリンの民が灰色山脈へ移住したこの頃に、ロヒアリムの祖フルムガールもまた、霧ふり山脈北端と灰色山脈の間に位置するエオセオドへ民を引き連れて行ったと伝えられています。

かれらの伝説にはフルムガールの息子フラムが大竜スカサを倒し、その財*6を手に入れた際に所有権を主張したカザドと諍いがあり、フラムはカザドに討たれたともあります。

しかし北から竜たちがやって来たとされるT.A.2500年頃とフラムが生きたとされるT.A.2000年頃では500年ほど間がある*7ので、この伝説は真偽のほどが明らかではありません。*8


エレボールへの帰還

エレボールに落ち着いたカザドたちは、不思議な品物や非常に値打ちのある武器や防具を作り上げ、近隣の人間たちとも親しくなります。

また、くろがね連山の親戚たちとの間で鉱石などを運ぶ往来は絶えませんでした。

こうして、この一帯の人間たちは強大となり、カザドはとみ栄え数も増えました。


スマウグ

その繁栄の噂は竜たちの耳にも達し、当時の竜の中で最大最強のスマウグがエレボールの富を奪うため急襲し、山の下の王国だけでなく近くの谷間の町も滅ぼしました。

逃れたカザドの大半はくろがね連山へ逃げ、スロールは少数の縁者と忠実な従者を連れて、南へ長い放浪の旅へ出ました。



アザヌルビザールの合戦

放浪生活に疲れはてたスロールは力の指輪を息子のスライン二世へ譲り、年老いた家来のナルだけを伴い一族の元を去ります。

先祖の栄光を懐かしんだ彼は霧ふり山脈へむかいカザド=ドゥームへ入ります。

そこでオークのアゾクに首を切られ、その額にアゾクの名を刻まれました。

アゾクは遺体を戸口の前へ放りだし「乞食。」と罵りながらナルへ向かって小銭入れをぶつけました。



ナルがスロールの首をスライン二世のもとへ持ちかえり事のしだいを話すと、スライン二世は鬚をかきむしりました。

彼は七日の間くちをつぐみ、坐りこんだ後、各地へ使者をおくり、三年をかけて全カザド王家*9から軍をあつめ、グンダバドからあやめ川に至るまでのオークの拠点という拠点を攻め落としました。

逃げ延びたオークたちはカザド=ドゥームへ集い、これを追跡したカザド軍はアザヌルビザールへやって来ました。



T.A.2799年、太陽の出ない暗い冬の日にアザヌビザールの合戦は始まりました。

天候と温存されていた多勢のオークたちにより、カザド軍は劣勢を強いられます。

くろがね連山から伯父スロールの仇を討つため参戦したナインは、果敢にアゾクへ挑みますが「もう一人乞食が来た。」と斬りつけられ命を落とします。

ですがナインの息子、鉄の足ダイン二世が敵将アゾクの首を討ちとり、カザド軍は合戦の勝利をおさめます。



生き残ったカザドたちはアゾクの口に例の小銭入れをつっこみ、杭の上にのせ復讐を果たしました。

しかしカザドたちの払った犠牲は多く、死者の一人一人を悼むまもないほどで、祝宴も開かれませんでした。

戦死者たちから鎧や武器を回収し*10、亡骸を火葬に付し*11、それぞれの故郷へ去りました。

そしてスライン二世は息子のトーリン二世の言*12に従い、再び放浪の身となることを選びました。


スライン二世の放浪

スライン二世はひとまず褐色人の国へ戻り、その後まもなくエリアドールを放浪するとエレド・ルインの東に仮住まいを持ちました。

それから何年か後に、黄金への渇望に耐え切れなくなり*13バーリンとドワーリンほか数名を伴って、エレボールを目指します。

しかしアンドゥインの先、闇の森周辺でスライン二世はサウロンの密偵に捕らえられドル・グルドゥアへ連れていかれると拷問の末に指輪を奪われ、土牢の中でついにかれは死にました。

連れのものたちはスライン二世を探しましたが、やがて望みを捨ててエレド・ルインのトーリン二世の許へ戻り、トーリン二世はドゥリンの世継となります。

トーリン二世はエリアドールで地道に働き、それなりの富を得、一族の数をすこし増やし、生活を安定させました。


エレボール奪還

T.A.2941年3月15日、トーリン二世はガンダルフと偶然に出会い、奇妙な計画にのることにしました。

かれの計画に従い、ホビット庄ビルボ・バギンズを雇い入れるとエレボールへ旅立ちます。

竜はエスガロスのバルドによって仕止められ、トーリン二世はエレボールを奪還しました。

しかし、それを知ったアゾクの息子ボルグはエレボールへ攻め込み、カザド・エルフ・人間*14・オーク・ワーグによる五軍の合戦が起こります。

この合戦でトーリン二世と甥のフィーリ・キーリは討ち死にしました。

そして援軍に馳せ参じたダイン二世が相続人となり、山の下の王国が再建されました。


カザド=ドゥームへの移住

ある頃からエレボールのカザドたちの間で「われらはカザド=ドゥームに戻るだけの力と人数がそなわったのだ。」との流言がもて囃され、これに耳を傾けたバーリンがオインとオーリを伴い一族の者を引き連れて南へ向かいました。

バーリンは広大なカザド=ドゥームのうち大門と第二十六広間からオークを追い払い、カザド=ドゥームの領主となります。

祖先の宝やまことの銀を掘り当てるも、ケレド=ザラムを見ようとしてアザヌビザールでオークに射殺されました。

残された者たちも大門へ至る橋と第二広間を占拠され、西門は水中の監視者に阻まれ、カザド=ドゥームへの移住は失敗に終わりました。


指輪戦争

一方、エレボールではサウロン使者が二度もモルドールへの臣従を迫り、ホビットの持つ指輪についてを尋ねに訪れます。

これを受けてダイン二世は、グローインとその息子ギムリを裂け谷へ送り、敵の意図を掴みました。



T.A.3019年、指輪とサウロンの力はいや増し、各地で自由の民との衝突が起こります。

そして3月17日、サウロンと同盟を組んだ東夷がカルネンの川をわたり、谷間の国を侵されたブランド王はエレボールのカザドたちの助力を得ます。

谷間の国での合戦は三日三晩つづき、ダイン二世はブランド王の亡骸の傍らに立ちはだかり最期まで力強くまさかりを揮いましたが、東夷の勝利となります。

しかしカザドも人間も多数がエレボールに避難し、敵の包囲に抵抗しました。

同年3月27日、南での大勝利の知らせが届くと東夷たちは動揺し、これを好機とみた味方は出てきて敵を打ち負かしました。

やがてダイン二世の息子トーリン三世が山の下の王となり、同じくして谷間の国の王位を継いだバルド二世と共にエレスサール王の戴冠式使者を送りました。

ゴンドールと友好関係を築いた両国は、ともに西方の王の王権の保護の下に置かれることとなります。





■参考文献

『新版指輪物語3旅の仲間下1』 J.R.R.トールキン著 瀬田 貞二・田中明子訳 評論社 1992年

『新版指輪物語4旅の仲間下2』 J.R.R.トールキン著 瀬田 貞二・田中明子訳 評論社 1992年

『新版指輪物語10追補編』 J.R.R.トールキン著 瀬田 貞二・田中明子訳 評論社 2003年

『中つ国Wiki』 http://arda.saloon.jp/

『Tolkien Gateway』 http://tolkiengateway.net/



2016/06/24 誤字と文章の微修正

*1:「モルゴスの召使、サウロンの力はその頃ふたたびこの世界に育ち始めていた。」新版指輪物語10追補編 王たち、統治者たちの年代記 ドゥリンの一族

*2:赤角山

*3:堕落してモルゴスに従ったマイアール

*4:鉄の足ダイン二世の祖父にあたる

*5:ローハンの民

*6:この内のひとつがマークの角笛であると伝えられています

*7:T.A.2500年頃になるとエオセオドの民は国主に初代ローハン王となるエオルを掲げていますが、勿論スカサが北の荒れ地の竜たちから孤立していた可能性もあります

*8:首飾りでカザドを挑発するあたり、何処かで聞いた話が混ざったような伝説に思えます

*9:七氏族の長老である長髭族の王に加えられた侮辱に全カザドが激怒した

*10:オークたちがやって来て手にれるといけないので

*11:カザドは石の墓以外に葬られることはなく、このような扱いはとても痛ましいものでした。しかしアザヌルビザールでの戦死者は、彼らの間でいつまでも敬意を持って覚えられています。

*12:スライン二世からの「鉄床へ戻るか?戸口にパンを乞うか?」の問いに対し、トーリン二世は「槌をふるっていればせめて腕だけはなまりますまい。いつの日かふたたびもっと鋭い道具を揮う時が来るまで。」と答えた

*13:他のドゥリンの世継に起こった不幸にもいえることですが、これは指輪の悪意であるかもしれません

*14:援助者として大鷲・ビヨルン