カザドの歴史 第一紀編

 トールキン #束adv Advent Calendar2015企画への参加記事になります。

 

ドワーフの始まりについて触れた前回の黎明編に続き、太陽の第一紀におけるドワーフの歴史をまとめてみました。

よろしければ合わせて、お付き合いください。

 

※これより先は『新版シルマリルの物語』や『終わらざりし物語(上)』のネタバレを含みます

カザドの歴史 第一紀編 

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太陽とノルドール

第一紀になると太陽とノルドール*1がベレリアンドへやってきました。

エルフの中でもアマン*2でアウレに学んだノルドールは、すぐにカザドの技を買いビジネスパートナーとなります。

 

ノルドール公子で後のナルゴスロンド王となるフィンロドは、カザドへ地下大城塞の建築を依頼し、カザドの職人たちはこの都市を築くほか、彼のために金に宝石の埋め込まれた首飾りナウグラミーアを作ります。

またノルドール公子カランシアと同盟を結ぶことで、とだえていたベレリアンドへの往来を再開するのでした。

 

その結果、ガビルガソルとトゥムンザハールの金属細工人と石工は広く名を知られることとなりました。

 

一方、小ドワーフは住む場所も追われました。*3

 

F.A.260年に突如、ベレリアンドに竜*4が姿を現します。
その姿にインスピレーションを受けたテルハール*5は、ガビルガソルの王アザガールの為に龍の兜を作りました。

 

以降、この巨大にして恐ろしき敵は何度もカザド達の前に立ちはだかることとなります。

 

アザガールとマイズロス

あるときアザガールはオークに襲われ、ノルドールの公子マイズロスにより救出されます。

アザガールは謝礼としてマイズロスに龍の兜を贈りました。

 

その後のF.A.468年、マイズロスが連合を提唱すると、アザガールの率いるガビルガソル軍はこれに加入します。

F.A.472年、ニアナイス・アルノイディアド*6の敗走の折はマイズロスとその兄弟たちを一族の戦士たちに守らせ、自らは最後まで踏みとどまり、その命と引き換えに敵を撤退させました。

 

カザドとエオル

ナン・エルモスに暮らすシンダール*7・エルフのエオルはカザドと親しくなり、たびたびガビルガソルやトゥムンザハールに滞在しては鍛冶の腕を磨きました。

ガルヴォルンという隕石を材料にした金属を生み出し、アングラヘルとアングイレルの二振りの剣をつくります。

また、カザドは彼の息子であるマイグリンにも鍛冶の技や鉱石の探索術を教えました。

 

しかし残念ながら、カザドたちと親子の付き合いは良い結果を招きませんでした。

F.A.400年にトゥムンザハールの夏至の宴へエオルを招くと、その隙にエオルの妻アレゼルはマイグリンを連れて実家にあたるゴンドリン*8へ帰ってしまいます。

そして鉱石探索が好きなマイグリンは、掟*9を破り敵に捕らわれゴンドリンの陥落を招くのでした。

 

ミームとトゥーリン

F.A.486年、ハドル家*10の嫡子トゥーリンは当時ネイサン*11と名乗り無法者たちの頭領をしていました。

ドワーフミームは不幸にも、彼らの一団と出会い捕らわれ息子のキームを殺されます。

そしてミーム自身の命への身代に自宅をトゥーリンに差し出し、小ドワーフと無法者たちの共同生活が始まります。

この共同生活の折に、ミームの口からトゥーリンへ小ドワーフの憐れな身の上*12が語られ今に伝わることとなりました。

ですが、この共同生活はミームがモルゴスの手先に捕らえられ裏切りを強要された事で終わりをつげます。

 

その後のトゥーリンは龍の兜の持ち主として名声を得たり、アングラヘルを用いて竜を屠りますが、呪われた運命により自刃に散ります。

 

ミームは先祖の棲家であったヌルッキズディーンの館、すなわち廃墟となったナルゴスロンドへ行き着きます。

そこでトゥーリンの父親フーリンにより殺害され小ドワーフは滅亡しました。

 

シルマリル

 フーリンはナルゴスロンドの廃墟よりナウグラミーアを持ち出し、フィンロドの親戚にあたるシンゴル王へ渡します。

シンゴル王は所持していた宝玉シルマリルを、この首飾りに埋め込むことを思いつき、ドリアスへ呼んだトゥムンハザールの職人に仕事を請け負わせました。

 

シルマリルをナウグラミーアへ埋め込んだ職人は、その美しさに心を奪われ悲劇が起こります。

この首飾りのためにシンゴル王はカザドの職人たちに殺され、カザドの職人たちもまたエルフに殺されることとなったのです。

そして真実を伏せられたまま、支払いを渋ったエルフに職人たちを殺されたと伝えられたトゥムンハザールのカザドたちは報復のためにエルフの都であるネメグロスへ攻め入ります。

この千年洞の合戦において勝利をおさめたカザドたちは大いに略奪を行い、ナウグラミーアも奪い取りました。

しかし、事態を知らされたシンゴル王の娘婿ベレンに帰路を急襲されトゥムンハザールの王は討ち取られ、ナウグラミーアも奪還されました。*13

 

怒りの戦い

裏切りと不和により国々が滅びベレリアンドを冥王モルゴスが牛耳るなか、航海者エアレンディルはアマンのヴァラール*14へ助けを求めます。

これを聞き入れたヴァラールは、マイアール*15とアマンのエルフたちをベレリアンドに上陸させモルゴス軍を滅ぼしました。

 

この戦いの激しさにより、ベレリアンドは崩れ水没しドルメド山のカザドたちは住む場所を無くしました。

 


■参考文献

『新版シルマリルの物語』 J.R.R.トールキン著 田中明子訳 評論社 2002年

『終わらざりし物語(上)』 J.R.R.トールキン著 クリストファ・トールキン編 山下なるや訳 河出書房新社 2003年

『中つ国Wiki』 http://arda.saloon.jp/

『Tolkien Gateway』 http://tolkiengateway.net/


2016/06/01 ネタバレの表記と記事の折りたたみを追加

2016/06/02 誤字修正

*1:エルフの氏族のうちの一つ

*2:神様の部下達の暮らす島

*3:「ノルドールがかれらの土地、かれらの故郷を盗んだからというのである。」新版シルマリルの物語 クウェンタ・シルマリルリオン 第二十一章トゥーリン・トゥランバールのこと

*4:モルゴスが創りだした怪物

*5:トゥムンザハールの名工、龍の兜の他はアングリスト、ナルシルが有名

*6:涙尽きざる戦い、連合軍でモルゴス軍を挟撃するも裏切りにより惨敗となる

*7:シンゴル王の氏族

*8:エルフの隠れ王国

*9:「ここに来る道を見出した者は、何人といえどもここから出ることを許されぬ」新版シルマリルの物語 クウェンタ・シルマリルリオン 第十六章マイグリンのこと

*10:人間の氏族のうちの一つ

*11:不当に扱われた者

*12:カザドの都市から追放され放浪し、身長も鍛冶の腕前も退化し、数もへりミームと息子が最後の生き残りであること

*13:サルン・アスラドの合戦

*14:神様の部下たち

*15:ヴァラールの部下