カザドの歴史 黎明編
トールキン #束adv Advent Calendar2015企画への参加記事になります。
たまたま大好きな中つ国のドワーフについて調べているタイミングで、この素敵な企画を知りました。
未だ私自身しっかり理解していない状態ですが小さくも愛すべき中つ国の住人ーーー自らをカザドと呼ぶ民の歴史の始まりに少し触れたいと思います。
※これより先は『新版シルマリルの物語』や『新版指輪物語10追補編』のネタバレを含みます
カザドの歴史 黎明編
アウレに創られた七人の父祖
カザド*1が、いつ創られたのか実はハッキリ解っていません。前後関係からして灯の時代か、もしくは二つの木の時代のエルフが目覚める前までにアウレ*2によって創られ…内緒にされていました。
しかし、バレます。
イルーヴァタール*3にバレたアウレはカザドをバラそうとします*4が、このときイルーヴァタールの心にトールキン作品にとって最も重要な感情が芽生えました。
そう、「情け」です。
何だかんだでイルーヴァタールの養子となったカザドは、長子たるエルフが先に目覚めるまで眠りにつきました。
父祖の目覚め
エルフが目覚めてから暫くたった、いつか(これもいつか解りません)ベレリアンドより東の何処かでカザドの七人の父祖は目覚めたと言われています。
不死のドゥリン
父祖たちは何処で目覚めたかもわりと解らないのですが、父祖たちの中でも最長老である長髭族の王ドゥリンはグンダバドで目覚めたそうです。
目覚めた彼はアザヌルビザール*5へやって来て、霧ふり山脈の東ケレド・ザラム*6の上の洞窟に住みました。
この場所が後に、カザド=ドゥーム*7となります。
彼は非常に長生きだったため、不死のドゥリンとして広く知られるようになりました。
上古の時代が過ぎる前に世を去りましたが、その家系に彼とそっくりな世継ぎが五度生まれ、ドゥリンの名を継ぐことになります。(しかしドゥリンの名は七世まであるので、誰か一人は似ていないのでしょう)
そのためカザドたちは、彼が何度も生まれ変わる転生者であると考えました。
エルフとの出会い
二つの木の時代1250年になるとエレド・ルイン*8を超えベレリアンドへの往来を始め、ガビルガゾル*9トゥムンザハール*10を築き、エルフとの交流や資源調達のためにドワーフ道を造ります。
このベレリアンド入りの際にエルフとの出会いがあったわけですが…あまりカザド側にとって気持ちのいいものでは無かったとだけ述べておきましょう。
しかし、カザドは我慢強く技や商いに貪欲な生き物です。
めげずにエルフの言葉*12を覚え、エルフの考案したルーン文字を文化に取り入れ、灰色マントのシンゴル王とのビジネスを成功させるのでした。
はじめての合戦
メルコール*13がモルゴス*14と呼ばれるようになり中つ国へ舞い戻るとシンゴル王に喧嘩を売りました。
これが闇の勢力と中つ国のエルフのはじめての合戦「ベレリアンド最初の合戦」です。
この戦いにおいてカザドはエルフ達に敗北して逃げ帰るオーク達を要撃し、ガビルガゾルとトゥムンザハールのあるドルメド山周辺を守りました。
これによりカザド達の平和はひとまず守られましたが、ベレリアンドはエルフ達の有力な都市を除き闇の勢力が闊歩する危険な場所となり往来は一時とだえるのです。
■参考文献
『新版シルマリルの物語』 J.R.R.トールキン著 田中明子訳 評論社 2002年
『新版指輪物語10追補編』 J.R.R.トールキン著 瀬田 貞二・田中明子訳 評論社 2003年
『中つ国Wiki』 http://arda.saloon.jp/
『Tolkien Gateway』 http://tolkiengateway.net/
2015/12/07 固有名詞の誤字と表記ゆれの修正、注釈と参考文献を追加
2016/04/29 不死のドゥリンについて追加更新
2016/06/01 ネタバレの表記と記事の折りたたみを追加
2016/06/02 誤字修正
*2:神様の部下
*3:神様
*4:「そこでアウレは、ドワーフたちを殴り殺すために、大きな槌を取り上げ、涙を流した。」新版シルマリルの物語 クェンタ・シルマリルリオン 第二章アウレとヤヴァンナのこと
*5:おぼろ谷
*6:鏡の湖
*7:モリア、霧ふり山脈の地下都市
*8:青の山脈、ベレリアンドの東の境界
*9:ベレグオスト、ドルメド山北側の要塞都市
*10:ノグロド、ドルメド山南側の洞窟都市
*11:「ノグロドとベレグオストのドワーフが山脈を越えて西に渡来する以前は、ベレリアンドのエルフたちは、このドワーフが何者であるかを知らず、かれらを追い立てて殺した。」新版シルマリルの物語 クェンタ・シルマリルリオン 第二十一章トゥーリン・トゥランバールのこと
*12:シンダリン
*13:アウレの元同僚で暴力と圧制に力を費やす初代冥王
*14:シンダリンで「黒き敵」の意